ページのまとめ
  • 事業内容がよくわかる会社は、よしあしが判断しやすい
  • 生活の中からヒントが得られることもあるが、一面的にならないように注意
  • インサイダー取引にあたらないよう注意

知らない事業の判断は難しい

投資家が会社を評価する尺度はいろいろありますが、評価の中心となるのは、その会社が行っているメインの事業に、将来性や、普遍性などがあるか、という点です。会社は事業を行うための入れ物のようなものなので、会社の良し悪し≒中心事業の良し悪しだと考えることは、自然です。

しかし実際上、わたしたちが、すべての会社の事業を評価していくことは、まず不可能です。世の中には多くの事業があり、聞いたこともないようなモノやサービスを提供している上場企業もたくさん存在します。そのような銘柄に対しては、事業の評価を行うことは難しいでしょう。

しかし、自分が仕事でかかわっている業界、あるいは趣味で深い知識がある業界、毎日の生活で関係している会社などであれば、話は別です。あそこの会社の新商品は非常に画期的だとか、あそこの店は最近サービスの質がとても低下した、などということは、すぐにわかります。

巨額の資産を持つことで有名な投資家のW・バフェットは、コカコーラや、ジレットといった、だれでも知っていて、しかも事業の内容が自分にもすぐにわかる会社にしか投資せず、ハイテクメーカーやIT企業の株は絶対に買わないことで有名です。

「自分のわかるものだけに投資する」というのは、銘柄選びの重要なポイントなのです。

そこで、本業の仕事や趣味に関連しており、事業内容について理解できる会社から選ぶというのが、銘柄限定のひとつの方法になります。

知っている会社を選ぶ例

たとえば、シマノという会社があります。この会社は、釣り具も作っているメーカーですが、自転車の部品で世界シェアトップの企業です。自転車部品での世界シェアは、実に7割と言われています。自転車好きな人ならこの会社を知らない人はいません。世界シェアトップですから、業績も超優秀です。

しかし、当然、世界に競業メーカーもあります。最近は、廉価な部品であれば、シマノよりも○○の部品が使われることが多いだとか、今度出た高級部品は、××製の方が人気がある、などといったことも、自転車を趣味にしている人ならすぐにわかります。こういった感覚を、株式投資に役立てるのです。

あるいは、生活者としての視点も利用できます。最近は、都心では、深夜営業や24時間営業をしている「ミニスーパー」がとても増えて、活況です。たとえば、イオン系列の「まいばすけっと」、マルエツ系列の「プチマルエツ」などです。

ミニスーパーは、これまであったスーパーと、コンビニの、ちょうど中間に位置づけられるような新しい業態です。街を歩いていれば、それまでは大型スーパーなどがなかった都心部で、こういった店が急速に増えていることに気付くはずです。これだけ増えているのだから、業績にも影響があるのでは、と推測が成り立ちます。

もちろん、そういったスーパーを毎日利用している人なら、「最近は品ぞろえが良くなった」といった改善や、「店員の挨拶の質が前より良くなった」といったこともすぐに気づくでしょう。

「ヒント」は会社の一部。全体像は、きちんと調べること

あるいは、マクドナルドのチキンナゲットに、腐りかけの肉が使われていたという報道があれば、普通に考えて食べたくないでしょう。当然、業績に大きな悪影響が出るだろうな、とすぐに予想できます。

このように、銘柄選びの「ヒント」は、生活のいたるところに転がっています。ただし、注意しなければならないのは、ヒントはあくまでヒントだということ。わたしたちが生活や仕事、趣味から得られるヒントは、その会社の一部だったり、表面的なものだったりすることもよくあります。

たとえば、だれでも知っているカメラメーカーのニコンがあります。しかしニコンの事業のうち、カメラなどの映像関連は、7割にすぎません。残りの3割は半導体製造機器などで、こちらの好不調が業績に影響を与えることも大きいのです。

また、同じカメラ関連で、富士フイルムは、もともと写真用のフィルムのメーカーで、いまでもデジタルカメラも販売しています。しかし、主力の事業は、今では液晶フィルムや医薬品、医療機器などになっています。

あるいは、光通信という会社はかつては携帯ショップで有名で、今でも携帯ショップは運営していますが、主力の事業は法人向けの事務機器販売になっています。

企業の全体像を知るためには、会社が出しているIR情報や『会社四季報』などの情報、さらには株価の動きもしっかり確認し、その上で投資に値するかどうかの判断をしなければなりません。

インサイダー取引にあたらないよう注意

ただし、本業に関わる会社の場合、インサイダー取引に該当しないように、十分に注意してください。インサイダー取引とは、業務上知りえた情報をもとに、株の売買をすることです。

証券監視委員会という、株式市場の警察のような組織が常に目を光らせているので、インサイダー取引があれば、まず発覚するものと思いましょう。

<最近の主なインサイダー取引摘発事例>
  • 2014年6月
    イオン元執行役とその知人たち計4人が、ダイエー株を巡りインサイダー取引をしたとして、金融庁から課徴金を納付するよう命じられた
  • 2014年8月
    東京都内の男性弁護士が家電量販店「ノジマ」の顧問弁護士をしていた際、同社株のインサイダー取引をしたとして、39万円の課徴金が課された