ページのまとめ
  • マネーの大きな動きは「リスクオン」「リスクオフ」という言葉で表される
  • 株は、リスクオンで買われて、リスクオフで売られる
  • グローバルマネーに影響を与える、米国の景気と金融政策は確認しておく

リスクオン、リスクオフとは

リーマン・ショック以降、グローバルマネーをはじめとした投資資金の動きを表すために用いられるようになった言葉に「リスクオン」「リスクオフ」があります。

  リクスオン    リスクオフ
具体例 QE3(アメリカ金融緩和)2012年9月以降 2008年9月リーマンショック後
状態 より高いリスクの投資先への投資が増える リスクを回避し、より安全な資産への投資が増える
全体の
動き
株や商品などへの投資が強まる 株を売って米国債や日本国債券を買う株も債券も売って、安全と思われる通貨にする
・全般的に買われる
・新興国への投資がとくに増える
・株のようなリスクの高い資産は、敬遠され、売られる
・株の中でも、新興国株は控えられる
株価 上がる 下がる
国債 米国債や日本国債が売られる 米国や日本などの安全と思われる国債が購入される
為替 ・円が売られる
・スイスフランが売られる
・円が買われる
・スイスフランが買われる
金(ゴールド) 売られる 買われる

リスクオンとは、グローバルマネーがリスクを取っている状態、つまり、より高いリスクの投資先に投資している状態(リスク選好)のことです。具体的には、債券よりも株が買われますし、株の中でも比較的リスクの高い新興国の株が好まれます。

リスクオフは、リスクを回避し、より安全な資産にマネーが向かっている状態を指します。金融危機のときは、株のようなリスクの高い資産は、敬遠されます。敬遠されるといのは、たんに買わないというだけではなく、これまで持っていた株を売るということです。

そして代わりになにを買うかというと、例えば米国債です。リスクオフの動き、とは、株を売って債権を買う動き、あるいは、株も債券も売って、安全と思われる通貨(日本円やスイスフラン)にしておく動き、などです。

また、金(ゴールド)のような貴金属も、価値が下がりにくい実物資産であるため、買われて価格があります。

リスクオンで株が買われ、リスクオフで債券が買われる

グローバルマネーの世界では、日本の国債や、日本円もリスクオフ、つまり安全な資産だと捉えられています。そのため、リーマン・ショック後のグローバルマネーの流れは、リスクオフの流れで、日本株売り(株安)、日本国債買い(国債高)、円買い(円高)と動きました。

リーマン・ショック後、米国では3回にわたる大きな金融緩和政策を実施しました。これらは通称、QE1(2008/11~2010/6)、QE2(2010/11~2011/6)、QE3(2012/9~)と呼ばれています。

この大幅な金融緩和が功を奏して、世界景気は回復基調を取り戻し、グローバルマネーは再び、QE3の開始から大きくリスクオンの姿勢を強めてきました。

米国株式市場も、日本の株式市場も、2013年は、年初から上昇基調でした。円が下落したのもグローバルマネーのリスクオンの一環だと考えることもできます。

アメリカの金融制裁で共に動く株価のチャート図

このように、日本の株式市場全体については、グローバルマネーの動きを無視しては考えられません。しかし、グローバルマネーは世界中の金融政策の影響を受けるので、その先行きを予測することはかなりの勉強が必要になります。

ヨーロッパの金融情勢や中東の政治的な危機、アフリカでの資源開発、中国での金融引き締め、こういったありとあらゆる場面での期待の変化をとらえて、利益を得ようと動いているのがグローバルマネーだからです。

米国の景気と金融政策はチェックしておく

そこで、株式投資の入門者は、まず米国の金融政策が現在どういう状況にあり、今後どうなりそうなのか、というところだけを、把握しておきましょう。米国の金融が、引き締め方向で動けば、マネーはリスクオフに傾き(株式市場に悪影響)、緩和方向に動けばリスクオンに傾きます(株式市場に好影響)。FRBの政策発表や要人の発言は常に注目してください。

また、金融政策は景気と密接に関係があります。したがって、米国の景気指標(雇用統計、住宅着工件数、など)についても、継続的にチェックした方がよいでしょう。

具体的には、リーマン・ショックなどの大きなリスク要因が発生した場合は、すぐに手持ちの株を全部売って、現金にしてしまうことです。そして、QEなどの対策が取られて、市場が全体が落ち着きを取り戻してから、再び投資を開始しましょう。

なお、グローバルマネーの動きは、市場全体に影響を及ぼし、影響の期間は数週間から数カ月程度の中期のことが多いようです。